7月27日(日)14:00 大阪いずみホール      
柴田南雄  M.Shibata 「人間について」(構成=柴田純子)
第1部 歌垣    曲の解説へ         当日の舞台進行のメモへ
    第1章  「常陸国風土記」より
    第2章 a「ホ・ザシ」
          b「うるはしと」
          c「むかつをに」
          d「もの思はず」
          e「つくはねの」
    第3章 a 雅歌第2章l。〜13
          b 雅歌第2章16〜17
          c 雅歌第7章11〜17
          d 結びのうた
第2部 生の種々相‐コラ―ジュ〜   解説へ   各団の分担・進行表  当日の舞台進行のメモへ
布瑠部由良由良/風/春立つと/三重五章
深山祖谷山/北越戯譜/なにわ歳時記/萬歳流し/追分節考
念仏踊/わが出雲・はかた/歌物語/大白道/大の坂
  ゆく河の流れは絶えずして
第3部 人間と死    当日の舞台進行のメモへ
    プロローグ「人生の短さについて」
    第1章   A:「マルテの手記」より
            B;「青森挽歌」より
            C:「ソレアの唄」
    第2章  IA:「Diesime(怒りの日)」
           IB:「父の死を悼む歌」
          UA: 声明と「理趣経」
          UB;「梁塵秘抄口伝集巻第十」より
    第3章「幽冥礼讃」より
指揮・演出:田中信昭
副指揮:西岡茂樹
特別編成による柴田南雄「人間について」合唱団
  新しい合唱音楽研究会/合唱団「うたおに」/豊中混声合唱団/混声合唱団ローレル・エコー
  ヴォア・セレステ/関西大学グリ―クラブ/大阪・柏原市少年少女合唱団
  多治見少年少女合唱団
森―夫(テノール)/村本和修(バス)/上杉紅童(石笛)/藤井恭恵(篠笛)/関 一郎(尺八)
舞台監督:中村真理
照    明:占賀満平
曲目解説(当日のプログラムより)                                       柴田純子
『人間について』は、『歌垣』『生の極々相』『人間と死』の三つのシアタ―・ピ―スで構
成されている。『歌垣』と『人間と死』は独立したシアター・ピースとしても演奏される
が、『生の種々相』は『人間について』全体が演奏される場合にのみ構成され,演奏され
る。シアター・ピースは、ステ―ジ上に整列して歌うふつうの合唱曲と違って、劇的ある
いは視覚的要素を含んでいる。合唱団のメンバ―は歌いながら歩きまわったり、所作をし
たりする。客席通路をふくむ会場全体が演奏の場所となる。
  1970年代の終わりに東京六大学混声合唱連盟から新作を委嘱されたとき、柴田はすでに
民俗芸能や社寺芸能を素材とするシアタ―・ピースをいくつか書いていたが、今度は大学
生にふさわしい、普遍的なテーマにしたいと言った。そこで「世界の多様性」をテーマに
『宇宙について』(1979)が作られ、「大学生のための合唱演習」シリーズ第―作となった。
のちに柴田は、『宇宙』がこれほど度々演奏されるようになるとは夢にも思わなかった、
とよく言っていたが、この破天荒な作品は三年後に合唱連盟「虹の会」で再演されて以来、
毎年のようにどこかで歌われている。むろんそれはひとえに、日本の現代合唱作品の発展
に力を尽くされている指揮者、田中信昭氏のおかげであって、柴田の合唱作品のほとんど
が田中氏の指揮で初演された。
  田中信昭氏のような協力者、というよりは推進者がなかったら、『人間について』の第
二部をコラージュにするというアイディアは決して生まれなかったであろう。『生の種々
相』には楽譜は存在しない。指揮者自身が、柴田の合唱作品の中から自由に素材を選んで
シアタ―・ピースとして構成するのである。柴田のシアター・ピースには多かれ少なかれ、
素材の選択や音楽の進行が指揮者の裁量にまかされる部分があるが、『生の種々相』はそ
れを最大規模に拡大したといえる。
  『人間について』は1984年に構想されたが,実際には演奏されずに12年が過ぎ、作曲者
の死後、昨年秋のサントリー音楽財団コンサ―ト「作曲家の個展'96柴田南雄」で初演さ
れた。今回が2回目の演奏だが、第二部のコラージュ素材がいくらか初演の時と異なって
いるので、新しい『生の種々相』ができあがるに違いない。『人間について』は演奏され
る度に、新しい作品として仕まれるのである。
■第―部  『歌垣』
『歌垣』は合唱連盟「虹の会」の委嘱作品で1983午に初演された。「虹の会」は武蔵・成
険・成城の三つの大学の合唱団の連合体だが.この団体が『宇宙について』を再演したと
き、柴田は、三つの合唱団の性格が似通っていて全体としてきわめて調和的だという印象
を受けた。そのこともあって「大学生の合唱演習」第二作は、古代の若い男女の愛の行事
である「歌垣」のシミュレ―ションを中心に作られることになった。
全体は三部分からなる。第一部では歌垣の場所として筑波山が選ばれたいきさつが『常
陸国風土記』によって歌われる。物忌みの日に訪れた祖神を家に人れなかった富士山は呪
われ、祖神を歓待した筑波山は祝福されて「楽しみがきわまりなく続く」ことになる。
第二部は、台湾の高砂族の恋の呼びかわしである「ホザシ」ではじまり、古代歌謡の恋
歌やはねつけ歌が続く。最後に「歌垣」を模して万葉集の二つの東歌が、沖縄県八重山の
恋歌トゥバルマの旋律で歌い交わされる。
第三部は旧約聖書の雅歌をテキストとして、愛がより高い次元に昇華しうることを示唆
した。雅歌は占代イスラエルの祝婚歌だが、聖書に取り入れられた時点で神と人との関係
に読みかえられている。その頃聖書の共同訳に協力しておられた小川国夫氏に訳をお願い
して、さらにフィナーレのための詩も書いていただいた。「結びの歌」では、心を開いて
生きる若人たちの姿が描かれている。
■第二部『生の種々相』
『人間について』が『歌垣』ではじまるのは、他者を認め愛することが「人間」として
の出発点である、という考えに基づいている。第二部『生の種々相』は入間がさまざまな
場所で、さまざまな時に、さまざまな「生」を体験していることの表現である。柴田は作
曲生活40年に40の合唱作品を書いたが、その中から指揮者が選んだ断片が会場のあちこち
で次々に、ある時は重なりあって歌われる。第三部ヘ移る部分は「レクイエム」と題され
ていて、死者を悼む内容の素材を使うように指定されている。今回は次の15作品の断片が
使われる。
  『布瑠部由良由良』(石上神宮の祓詞ほか、1980)
  『風』(北原白秋、1948)
  『春たつと』(梁塵秘抄、1989)
  『三重五章』(内鶴ほか.1994)
  『深山祖谷山』(太田信圭ほか、1983)
  『北越戯譜』(新潟県のわらべ唄と盆踊り、1975)
  『なにわ歳時記』(大阪のわらベ唄と民俗芸能、1983)
  『萬歳流し』(秋田県横手の萬歳、l975)
  『追分節考』(上原六四郎、迫分節ほか、l973)
  『念仏踊』(日本書紀、融通念仏ほか、1976)
  『わが出雲・はかた』(人澤康大・那珂太郎、1981)
  『歌物語』(吉増剛造、1982)
   [レクイエム〕
  『無限嬢野』より「大白道」(草野心平、1995、遺作)
  『北越戯譜』より「大の坂」(新潟の盆踊り歌、1975)
  『ゆく河の流れは絶えずして』(鴨長明、1975)
■第三部『人間と死』
  『人間と死』は1984年に『人間について』のフィナ―レとして立案されたが、独立した
作品でもある。東京六大学合唱連盟の委嘱作品として1985年に初演された。プロローグと
三つの章からなり、それぞれの章が「死」を異なった視点から扱っている。
  最初にロ―マの哲学者セネカの『人生の短さについて』の―節を全員で歌って、「死」
の概念を導人する。第―章は「死」の記述である。合唱団は三群にわかれ、A群がリルケ
の『マルテの手記』で老侍従デトレフの傲岸な死を、B群が宮沢賢治の『青森挽歌』で妹
とし子の静かな死を、そしてC群がロルカの『ソレアの唄』で暴力による突然の死を描写
する。A、B、Cの音楽はきわめて対照的な様式で書かれている,
  第二章は残された者たちの「死」ヘの対処をテーマとしている。西洋キリスト教世界に
おける「死」の意味づけが、グレゴリオ聖歌の『怒りの日』を背景に歌われる―方で、ひ
たすら供養に専念する東洋仏教世界の態度が、梁塵秘抄ロ伝と理趣経の組み合わせで描か
れる,
  第三章はJ.L.ボルヘスの『幽冥礼讃』の―部をテキストとした。遺伝的な眼疾で失明
したこのアルゼンチンの詩人は、「死」を前にした人間が確実に言えるのは何かを教えて
くれる。前章の音の混沌から―転して、透明な響きのうちに『人間の死』が、そして『人
間について』が完結する。
| 順番 | 曲名 | 編成 | 担当合唱団 | 入場のきっかけ | 演奏のきっかけ | 退場のきっかけ | 退場後の行動 | 
| 1 | 布瑠部由良由良より十種祓詞 | 混声(斉唱) | 新合研 | 2部開始前に下手階段からオルガン前に板付き | 2部開始時の照明入り | 田中先生のXで演奏終了し、下手袖へ退場 | 深山祖谷山の入場に備えて、大至急下手袖に待機 | 
| 2 | 三つの無伴奏混声合唱曲より風 | 混声 | 豊中混声 | 2部開始前に上手から入場し板付き | 田中先生のQ | 演奏終了後、上手へ退場 | 大白道の入場に傭えて、テノール・ソプラノは下手袖奥、バス・アルトは上手袖奥に待機 | 
| 3 | 春立つとよりそよ春立つと | 混声篠笛 | ロ―レル | 2部開始前に下手から入場し板付き | 田中先生のQ | 演奏終了後、下手へ退場 | 大白道の入場に備えて、テノール・ソプラノは下手袖奥、バス・アルトは上手袖奥に待機 | 
| 4 | 三重五章より伊勢の手まわし | 混声 | うたおに | 豊中混声退場後、田中先生のQで上手から歌いながら入場 | 豊中混声退場後、田中先生のQで上手から歌いながら入場 | 演奏終了後、そのまま残り、リラックス | 退場しない、その後、多治見と柏原の歌遊ひにつられて追分の体型へ移動 (途中、万歳にも関心を持つ) | 
| 5 | 深山祖谷山より阿佐名と | 混声太鼓 | 新合研 | ロ―レル退場後、田中先生のQにて下手から入場 | 田中先生のQ | 演奏終了後、そのまま残り、リラックス | 退場しない、その後、多治見と柏原の歌遊びを楽しみ、次第にあちこちから退場。男声は、大白道に備えて、テノ-ルは下手袖、ハ'スは上手袖に待機、女声は、大の坂に備えて、下手側客席横扉外に待機 | 
| 6 | 北越戯譜 | 児童 | 多治見少年少女 | 田中先生のQであちこちから歌いながら入場 | 田中先生のQであちこちから歌いながら入場 | うたおにが追分のtuttiを歌い終わった頃、次第にあちこちから退場(途中、万歳にも関心を持つ) | 歌物語の入場に備えて、着替えを済ませ、下手袖{こ待機 | 
| 7 | なにわ歳時記 | 児童 | 相原少年少女 | 多治見の演奏開始と共に、あちこちから歌いながら入場 | 多治見の演奏開始と共に、あちこちから歌いながら入場 | 念仏の齢が聞こえたら、次第にあちこちから退場(途中、万歳にも関心を持つ) | 天の取に備えて、客席後万ロビ―に待機 | 
| 8 | 万歳流し | SoIi | 東混(森、村本) | 田中先生のQで歌いながら入場 | 田中先生のQで歌いながら入場 | 追分の気配を感じながらいつか退場 | なし | 
| 9 | 追分節考 | 混声 | うたおに | 既に舞台上にいる | 田中先生のQ | 念仏の鈴が聞こえたら、次第に歌いながら退場 | 男戸は、大日道に備えて、テノールは下手袖、バスは上手袖に待機、女声は、大の坂Iこ備えて、上手側客席横扉外に待機 | 
| 10 | 念仏踊り | 女声鈴 | ヴオアセレステ | 田中先生のQで上手側客席扉より歌いながら入場 | 田中先生のQで上手側客席扉より歌いながら入場 | 関大グリ―が終わったら、次第に歌いながら退場 | 大の坂に備えて、下手側客席横扉外に待機 | 
| 11 | わが出雲・はかた | 男声 | 関大グリ― | 念仏の鈴が聞こえたら用意、その後、田中先生のQにて上手から入場 | 田中先生のQ | 演奏終了後、上手ヘ退場 | 大白道に備えて、テノールは下手袖、ハスは上手袖に待機 | 
| 12 | 歌物語 | 児童 | 多治見少年少女 | 田中先生のQで下手から入場 | 田中先生のQ | 大白道が聞こえたら、次第に歌いながら下手ステ―ジ奥より退場 | 天の坂に備えて、両側の舞台袖のオルガン用階段に待機 | 
| 13 | 無限魔野より大白道 | 混声 | 豊混、ローレル、 | 田中先生のQでバスが歌いながら上手から入場、テノ―ル、女声が続< | 田中先生のQでバスが歌いながら上手から入場、テノ―ル、女声が続く | 男声は語りと共に、客席後方扉から退場、女声は残る | 男声は終了、女声は大の坂に備えて、そのまま待機 | 
| 14 | 大の坂 | 児童 | 児童、女声全員 | 大白道を歌って残っている豊中混声とロ―レルの | 大白道の男声の行進が客席中央あたりまで来たら、まず柏原が歌い出す以降の演出は未定 | ||
| 15 | 行く河の流れは絶えずして | 女声・児童 | 児童、女声全員 |