「風の馬」・・・
次のステージの「牧歌」。
中国に行くと決まって、とりあげたこの作品。
歌えば歌うほど、壮大なイメージが広がります。
副団長の言う「アジアの歌」の意味が辛いほど分かります。
日本からやって来たのです、僕らは。
冒頭のソプラノの高いソリがグレングルドスタジオに響きわたります。
なんて穏やかで、壮大。
牧歌も、個人的には素晴らしい出来だったと思っています。
この会場にふさわしい曲です。
そして、そのまま今度はチベットの平原を歌うことになります。
前半最後の曲、
「風の馬」。
ここまで順調に来たこのコンサート、大きな落とし穴が待っていました。
人数が足りなくて苦しんだ男声。
けれど女声陣にはたやすかったかというとそうでもなく、自分たちのことに必死で気にかけず、別枠で進めていた女声の演奏を途中で聴いたとき結構愕然としました。
ただ単に、あのフレーズが歌えるようになれるだけではダメ。
もっと内面的なものがないと。
聴いた中、いつも思いました。
歌ってる本人達もそうだったようです。
この曲の持つイメージには(個々持っている物は違うのだろうけど)とうてい近づけない・・・。
ただ女声は形になっているだけまし・・・男声はもっと大変。
不安な部分をまだ残したまま、日本を発ちました。
当然、指揮者の不安はもっとだったでしょう。
第1曲と第2曲は女声合唱。
「第1ヴォーカリーズ」「指の呪文」
歌い始め、男声はSATBで並んだまま聴きます。
違う・・・。
確かに「風の馬」に「うたおに」はまだまだ近づいていないと思う。
けれど、違う!
「うたおに」はこんなんじゃない!
2曲が何か(そう思っただけかも知れないけれど)ぎくしゃくしたまま終わり、男声合唱を迎えます。
第1声・・・あ!!
・・・ハーモニーが違う・・・。
音が違う。
・・・違う・・・でも直せない。
止められないし、直せない・・・。
あんなに練習したのに・・・。
途中から、それらは直っていました。
けれど、いつまでも尾を引き、それを聴いていた女声も動揺したのでしょう、コンクール全国大会でも歌っている混声の「第3ヴォーカリーズ」の最初さえもなにかぎくしゃくずれてました。
無理矢理歌い続けている感じのまま終曲の男声「食卓の伝説」。
ついに最後にはこの曲を閉めるべくフレーズさえ拍がずれてしまいました。
みんなで無理して、時間枠をとって、あんなに練習したのに。
・・・僕には、そんな後悔の思いを引きずったまま「結句」の”アビ・ヨーヨー”
「風の馬」終演。
どんなにお客様はあきれているだろう?
演奏中そんな、音楽と本末転倒なことばかり考えていたような気がします。
けれど、決して「あきれたお情け」、というのでなくしっかりした拍手を頂きました。
ほとんどうなだれるように、袖に戻りました。
休憩の間に「17俳句」の提灯を用意し、セットしないといけません。
早く「俳句」の頭に切り換えないと・・・。
でも、何かさっきまでとは全く違う世界に連れて行かれたように呆然として、
「俳句」には切り換えられない僕でした。